三連休「中日」投票という日程選択。意図を疑うのが合理的である理由

1 リスク構造の整理

三連休中日の国政選挙は、与党にとって三つのリスクを抑える設計になっている。

  • 投票率リスク 投票率が下がるほど固定支持層(高齢・地方)の比重が相対的に上がり、与党の議席期待値は高まる。
  • 終盤キャンペーンリスク 投票日が早いほど選挙終盤に発生するスキャンダル・失言などの露出日数が減り、ダメージを最小化できる。
  • オペレーションリスク 月曜祝日投票は選管の休日手当や翌日の集計体制を重くし、自治体の反発を招きやすい。中日ならその口実を回避できる。

2 日程別コスト‐便益比較

2 日程別コスト‐便益比較

期待議席を次のように定義する。
E = V_f * S_f + V_m * S_m

V_f : 固定層の投票率
S_f : 固定層における与党得票シェア
V_m : 可変層(若年・無党派など)の投票率
S_m : 可変層における与党得票シェア

固定層は期日前投票を多用するため V_f は日程による変動が小さい。
可変層は旅行・帰省で三連休の「中日」に流出しやすく、投票率は

V_m_middle  <  V_m_final

となる(middle=中日、final=最終日)。

可変層での与党得票シェアは 0.5 未満と推定されるので、日程による期待議席の差分 ΔE は

ΔE = ( V_m_final - V_m_middle ) * S_m   < 0

すなわち、中日を投票日に選ぶほど与党の期待議席 E は増加する。


3 実証知見との整合

  • 祝日前後で投票率が 2 pt 前後低下する自然実験(スロバキアの学校休暇)では、低下分の多くが若年・都市部から失われた。
  • 欧米の分析では投票率低下が保守政党にプラスに働く傾向が確認されている。
  • 日本の 18–19 歳投票率(22年参院)は 34.5 % にとどまり、可変層が希薄であるほど与党のシェアは相対的に拡大する。
  • 「選挙当日を休日に指定するだけでは投票率は大きく上がらない」とする米国の州職員向け休暇実験(Farber 2008)は、単純な休日効果の限界を示す。

これらの知見すべてが「旅行ピークと重なる中日は投票率を押し下げ、固定層優位の与党に有利」という仮説を裏づける。


4 制度的裁量点の集中

投票日確定までには

  1. 通常国会召集日
  2. 会期延長の有無
  3. 「日曜日投票」の慣例を破るか否か
    という三つの裁量ポイントがあり、それぞれを調整すれば最終日(月曜祝日)や連休外の日程も選べた。実際にはすべてが「中日」に収束している。

5 結論

  • リスク最小化と得票最大化という利害に沿って考えると、中日投票という異例の日程は合理的帰結となる。
  • 法手続き上の瑕疵はなくても、複数の裁量点が一方向に働いた結果は「恣意的」と評価せざるを得ない。
    したがって、三連休最終日ではなく中日を選んだのは、与党の利害が強く作用した判断とみなすのが最も合理的である。

自民党政治そのものが抱える歪みと日程操作の必然性

自民党は長期政権を通じて巨大な分配ネットワークと派閥序列を維持してきた。政権離脱は単なる議席減では済まず、与党特権(不起訴保証・利権配分・官僚人事)が途絶えた瞬間に、派閥間の力学が一気に崩れ、主流派の議員は政治生命どころか私生活の安全保障まで脅かされる
この「内部権力闘争=ゼロサム戦」の構造が、政権維持を絶対条件とする強烈なインセンティブを生む。思い返せば、安倍政権期のメディア統制圧力や統計改ざんは、主導派閥が生き残るために制度をねじ曲げた実装例と位置づけられるし、今回の参院選を連休中日に据えた決定も、その延長線上にある。

  • 投票率を下げる設計 は、野党票だけでなく党内反主流派の伸長も抑え、主流派の序列防衛を図る。
  • 選管の前例主義や自治体負担を“盾”にした日程操作 は、制度違反を回避しつつ批判耐性を高める手堅い手法である。

石破茂や小泉進次郎に肯定的な私の立場でも、このいびつさ、「派閥存続が国政運営より優先される歪み」は看過できない。
三連休最終日という穏当な選択肢を排し、異例の中日を選ぶ合理性は、結局のところ 主流派閥が抱える内在的恐怖と自己保存本能 に根差している。

つまり異例の中日設定は、制度の前後関係では説明しきれず、そもそも自民党という長期与党が抱える組織的利害と恐怖が発動した結果であり、意図を疑うのが合理的である。