
2024年4月21日の河野太郎氏のXのポストがタイムラインに流れてきた。誰かがリポストしたものだと思う。久しぶりに目を通してみたのだが、内容そのものが直ちに制度違反だとか、手続き上おかしいという話ではない一方で、言葉の使い方として見過ごせない懸念があると感じた。
先に立場を明確にしておくと、私はいわゆる「ワクチン反対派」でも「推進派」でもない。基本的に子どもたちが打っている各種ワクチンは必要なものとして捉えているし、私自身もコロナワクチンを接種してきた。だから今回の話は、ワクチン一般の是非を争うためのものではない。
気になったのは、あくまで言葉と論理の整合性だ。ワクチン行政の制度設計や救済制度の説明としては筋が通っている。しかし同時に、過去に本人が公に使ってきた「私が責任を取る」「すべての責任を引き受ける」といった強い表現と、今回のポストで示される「制度上ここまで」という切り分けとの間に、国民の側で矛盾として立ち上がってしまうギャップがある。
制度上の問題がないことと、言葉と論理の整合性が保たれていることは別だ。今回はそこを混同したくないので、あくまで第三者が読んでも論点が分かるように、私なりに気になった点を淡々と整理しておく。
河野太郎氏の説明は、制度の説明としては成立している。薬事承認は厚労省側の手続きで行われ、接種後に健康被害が起こり得ることを前提に、予防接種法に基づく救済制度が用意されている。制度の枠組みとして、これ自体は日本の建付けと矛盾しない。
しかし問題は制度の正しさではない。本人が過去に用いた「私が責任を取る」「全責任を引き受ける」といった言葉と、現在の説明で示される「私の責任はここまで」という切り分けの間に、同じ責任という語を使いながら、射程が変わってしまっている点にある。
過去の発信として確認できるのは、余剰ワクチンを廃棄しないために、現場が柔軟に運用できるよう促し、その際に「問題になるなら自分が責任を取る」という趣旨が公に述べられていることだ。ここで用いられる「責任を取る」という表現は、一般の言語感覚としては、政策遂行の帰結として生じる問題について、最後まで引き受けるという広い意味で受け取られ得る。少なくとも現場にとっては「国が守る」「担当大臣が批判を引き受ける」という保証として機能し、実際に運用を前へ進める政治的メッセージになる。
一方で、この時の説明では「承認は厚労省の有識者審議会で確認して承認され、それには自分は関わっていない」「承認されたワクチンを交渉して入手し、配布して打ってもらうのが自分の責任」と、責任範囲が承認後の調達・配布・運用支援に限定されている。さらに健康被害については救済制度の説明へ接続し、責任という論点を制度の手続きへ回収している。
ここで生じる齟齬は、法律上の矛盾ではない。言葉と論理の矛盾である。
理由は単純で、「責任を取る」「全責任を引き受ける」という表現は、本来、受け手に合理的な期待を生むからだ。政策を推進する局面で、その言葉は現場に対して広い保証として作用する。ところが、後になって「私の責任はここまで」と制度の枠で切り分け直すと、受け手から見れば「当時は包括的に引き受けるように言い、後から制度で切り落とした」という評価が生まれても不自然ではない。
重要なのは、ここが「制度上、誰が補償するか」という技術論だけの話ではなく、「自分の言葉が社会に与えた合理的期待を、後から別の定義で回収していないか」という論理の問題だという点である。制度を持ち出して責任を切り分けること自体は可能だが、当時「責任を取る」という強い言葉で現場を動かした以上、後に責任範囲を限定するなら、当時の言葉がどの範囲を指していたのかを明示し、誤解が生じたこと自体について説明責任を果たす必要がある。そうでなければ、「責任」という語が、必要なときだけ広く、都合が悪いときだけ狭い、という運用になり、政治的言語としての信頼性が損なわれる。
結局、指摘すべき点はここに尽きる。制度上の整理が正しいかどうかとは別に、過去に「責任を取る」「全責任を引き受ける」という語で示した射程と、現在示している制度上の切り分けとの間にはギャップがある。そのギャップを埋める説明なしに「制度ではこうだ」とだけ述べるのは、制度の説明としては成立しても、言語と論理としては整合していない。
参考URL
https://www.taro.org/2024/10/%E3%83%87%E3%83%9E%E3%82%84%E8%AA%B9%E8%AC%97%E4%B8%AD%E5%82%B7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.php
https://x.com/konotarogomame/status/1397150629739458571
https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h2505