窓の無いワルツ

布団は敷かれたままで、畳には長く沈んだ跡が残っている。
部屋の隅には、茶色い置き型冷房があった。昭和の頃のもので、全然涼しくならない。
カーテンはいつも閉じていて、窓はあるのに、そこから外を見るという感覚が次第に薄れていった。

扇風機の風だけが部屋を流れ、干しっぱなしの洗濯物がその風に少し揺れた。
光は届いていたはずなのに、部屋の中では色が変わってしまうような、そんな感じがした。
床にはものが多く、誰がどこに座るかは、物の配置で自然と決まっていた。
テレビはついていたが、音が壁に吸われるようで、何が流れていたのか覚えていない。

誰かが話していた記憶もあるし、静かだった気もする。
そのどちらも確かで、どちらも不確かだった。
部屋の中には生活があったけれど、時間の流れはどこか切れているようで、
思い出すたび、景色だけが先に浮かび、気持ちは少し遅れてやってくる。

羽虫の賑い行く末は、剥がれた壁紙の隙間からしみ出す朝。
錆びたステンレスに残る歯形、誰がかじったバナナの皮、
干からびた雑巾の上で乾く声。
なかったことになる前の、かすれた足音のララバイ。

羽虫の賑い行く末は、黙って置かれたゴミ袋の口、湿った床に落ちた灰皿の縁。
にじんだ新聞の見出しの文字を踏みつけて、一匹ずつ、生まれては、去っていく。