雨のち葉桜
桜の季節になると、雨が降る。
待っていたように。
咲ききった枝の上へ、
空はうすい灰をひろげて、
黙って冷たいものを落としてゆく。
しら、しらと。
桜は濡れて、
ひとひらずつほどける。
あれほど明るかったのに、
もう地面にいる。
これは、ただの季節。
でも私には、空が拗ねているように見える。
咲きそろった桜を、
面白くないと思うのが、
高いところにいる。
桜は返さない。
ただ散ってゆく。
散りながら、なおきれいで、
それがまた、
相手を黙らせない。
私はそれを見ている。
恋人どうしの言い争いを、
離れたところから見てしまったような、
妙に落ちつかない気分。
雨が過ぎる。
花は落ちる。
葉が出る。
あとには、
濡れた地面と、
寄った桜が残る。