雨のち葉桜

(更新: 2026.04.11)

桜の季節になると、雨が降る。
待っていたように。

咲ききった枝の上へ、
空はうすい灰をひろげて、
黙って冷たいものを落としてゆく。

しら、しらと。

桜は濡れて、
ひとひらずつほどける。
あれほど明るかったのに、
もう地面にいる。

これは、ただの季節。
でも私には、空が拗ねているように見える。

咲きそろった桜を、
面白くないと思うのが、
高いところにいる。

桜は返さない。
ただ散ってゆく。
散りながら、なおきれいで、
それがまた、
相手を黙らせない。

私はそれを見ている。
恋人どうしの言い争いを、
離れたところから見てしまったような、
妙に落ちつかない気分。

雨が過ぎる。
花は落ちる。
葉が出る。

あとには、
濡れた地面と、
寄った桜が残る。